質屋と古物商 必要な許可と営業上の特徴とは?

質屋と古物商の違いについて疑問

質屋と古物商に必要な許可とは?

質屋と古物商な具体的にどう違うのか?

質屋も古物商も共にお客様から物品を受け取り、お金を渡すというサービスを提供しますが、質屋と古物商、実は似ているようで全く異なります。そこでこの記事ではその違いについて名古屋の質屋 金蔵(キンゾー)に務める査定士がプロの目線で詳しくご説明していきます。

質屋とは、日本では鎌倉時代からある金融サービスの一つで、古くは古代中国の農民に対する短期融資に端を発しています。私たち質屋のサービスは「質入れ」や「質預かり」と呼ばれる品物を担保にして融資をする事と、品物を買い取ることです。質屋に持ち込まれる品物は「質物」や「質草」と呼ばれ、質屋は質物/質草を評価、査定し、それに見合った金額を貸し出したり、買い取ったりします。一方、古物商とはリサイクルショップやアンティークショップ、買取専門店などが該当し、中古の品物を買取って販売したり、有料でレンタルしたり、または中古品と中古品の交換など、主に売買を通じて利益を得るビジネスモデルです。簡単にご説明すると、質屋は品物を担保にお金を貸すことができ、買取りもできるところで、リサイクルショップを代表とする古物商は買取りだけできるところ、という違いがあります。

まず大前提として質屋を開業するには多額の自己資金が必要であるため、参入が難しい業態です。また、質屋の開業にはその質屋がある住所の所轄都道府県公安委員会にから営業許可を得ねばなりませんが、所轄の担当者がそのプロセスを忘れてしまうほど、私たちの質屋がある名古屋市ではしばらくの間新規参入者がいません。一方でリサイクルショップは質屋と比べると圧倒的に多く、2024年10月のデータベースを使用した統計情報によると、東京都の質屋は385件に対してリサイクルショップは1774件、私たちの質屋がある愛知県では質屋数131件に対し、リサイクルショップ995件とかなりの開きがあることがわかります。つまり、リサイクルショップの方が開業しやすいことが数字上からも見て取れます。なお、リサイクルショップと質屋の詳しい違いについては「質屋とリサイクルショップ、買取店の違いを質鑑定のプロが紹介」で詳しく解説していますのであわせてご覧ください。

質屋と古物商は営業上必要な許可が違う

質屋と古物商は法律が違う

質屋を開業し、「お金を貸し出す」というサービスを提供するためには昭和25年に制定された質屋営業法に則った営業許可を取得しなければなりません。詳しい内容は質屋営業法の第一条に明記されています。

第一条 この法律において「質屋営業」とは、物品(有価証券を含む。第二十二条を除き、以下同じ。)を質に取り、流質期限までに当該質物で担保される債権の弁済を受けないときは、当該質物をもつてその弁済に充てる約款を附して、金銭を貸し付ける営業をいう。

e-gov 法令検索 昭和二十五年法律第百五十八号 質屋営業法

このように質屋営業法で定められている業務内容は金銭の貸付けであり、古物の買取、販売は許可されていません。そこで古物を売買するために必要となる営業許可が「古物商許可」です。古物商許可は昭和24年に制定された古物営業法によって定められており、中古品の売買や交換、レンタルなどの「古物商」を営む上で必要な許可です。この許可は主に盗品の売買の防止など特定の目的があり、その内容は古物営業法の第一条に記されています。

第一条 この法律は、盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るため、古物営業に係る業務について必要な規制等を行い、もつて窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復に資することを目的とする。

e-gov 法令検索 昭和二十四年法律第百八号 古物営業法

このように質屋営業法と古物営業法では許可の内容が異なるのです。質屋を営業する場合は、質屋営業法と古物営業法という特定の二つの営業許可を取得しなければなりません。

質屋営業許可と古物商許可の取得に必要な要件とは

質屋と古物商は保管設備の有無などがある

質屋営業許可も古物営業許可も営業所や店舗の所在地を管轄する都道府県の公安委員会に様々な事項を記入した書類を提出して審査を受ける必要があります。審査に通るためにはそれぞれ必要な要件が異なります。

質屋営業許可に必要な要件
  • 申請書
  • 申請者に係る書類
  • 法人に係る書類
  • 保管設備に係る書類

質屋の営業許可を受けるにあたり特徴的なのは、保管設備に係る事項です。質屋ではお客様から預かった品物を厳重に保管する義務があり、その保管設備には法令で特定の基準が設けられています。例えば、質屋の保管設備は基本的に営業所と同じ敷地内に設置されていなければなりません。この保管施設は耐火構造もしくは土蔵造りなど、耐火基準を満たしている必要があります。これらの設備は「質蔵」と呼ばれ、堅牢な施錠が必須で、防虫やネズミの侵入防止策も講じられている必要があります。つまり、質屋を営むにはある程度敷地の大きな土地を所有、もしくは借りておく必要があるということです。

古物営業許可に必要な要件
  • 申請書
  • 略歴書
  • 誓約書、住民票、証明書など

古物営業許可の取得にも必要な書類は多いのですが、質屋のように返却前提でお客様から品物を「預かって保管」する必要が無いため、品物の保管設備に関する基準などはありません。古物営業許可登録の際は自宅の住所でも可能です。

つまり、これまででご紹介した質屋と古物商の違いをまとめると、質屋を開業するには、質屋営業法と古物営業法に基づいた許可を受け、莫大な自己資金に加え品物を保管する堅牢な建物の設置、建物と質屋を併設できるだけの土地が必要ということです。一方、リサイクルショップなどは古物商営業法に則った許可を取るだけでよく、自宅でも開業が出来るのです。

これだけを見ても質屋を開業することが難しいことがお分かりいただけたのではないでしょうか。これらの事から質屋とリサイクルショップの数に大きな開きがある一因でしょう。では次は、それぞれの特徴を比較してみましょう。

質屋と古物商、営業上の特徴とは

質屋と古物商営業条の特徴とは

大半の質屋は質屋営業許可に加えて、古物営業許可も取得しているため、質屋は貸付業務も買取業務もどちらも可能です。

質屋の特徴1(貸付)

質屋の貸付の特徴
  • 担保融資: 質屋では品物を預けて、一定期間の間お金を借りることができます。
  • 期限付き返済:質屋で借りたお金は、通常3ヶ月以内に返済する必要があります。返済ができない場合、質物は質屋の所有物となります。
  • 利息の発生:借りた金額に対して利息がかかります。利息は質屋によって異なりますが、法律で上限が定められています。

質屋の特徴2(買取)

質屋の特徴
  • 査定:品物の価値を査定し値付けもしくは買取りをします。
  • 買取:査定金額に納得した場合は品物の所有権が質屋に移ると同時に現金を手にいれることが出来ます。

質屋を利用する流れ

1. 品物を持ち込む
まず、質物を持ち込みましょう。電話やオンライン、LINEなどでの査定を行っている質屋も多く存在しますが、写真や画像ではわからない傷などがあった場合は査定額から減額になる可能性があります。そのため査定は店舗に持ち込むこをとおすすめします。持ち込む商品は高価な貴金属やブランド品が一般的ですが、その他スマートフォンや工具なども持ち込み可能です。ただし、取り扱う品物は店舗によりますので事前に確認が必要です。
2. 査定を受ける
専門スタッフが質物の価値を査定します。消費者金融などとは異なり、個人の信用情報などは一切関係ありませんので、通常は数分で査定が完了します。
3. 融資を受ける
査定結果に基づいて、融資額/買取額を提示します。納得した場合、その場でお金を受け取ります。融資を受ける場合は通常、買取金額の7割〜8割程度の値付けになります。
4. 返済
返済期限内に借りた金額と利息を返済することで、質物を取り戻すことができます。利息は1ヶ月単位で発生し、日割り計算は出来ません。ただし、買取の場合は利息分買取の場合は返済の義務はありません。

古物商の特徴

古物商は売買、リース、交換などを行う
  • 中古品の売買:古物商は、中古品を買い取りそれを再販売します。買い取り価格は商品の状態や市場価値によって異なります。
  • 中古品のリース:買取った中古品を有償で貸し出すことがあります。
  • 中古品の交換:金銭が発生せずに中古品と中古品を交換することがあります。
  • 多様な商品:古物商が取り扱う商品は多岐にわたり、家具、家電、衣類、アクセサリー、スポーツ用品など、さまざまなジャンルの商品を取り扱います。一般的に古物商が取り扱う品目は質屋が取り扱う品目よりも多い傾向にあります。

古物商を利用する流れ

1. 商品を持ち込む
不要になった商品を古物商に持ち込みます。
2. 査定を受ける
古物商のスタッフが商品の状態を査定し、買い取り価格を提示します。
3. 売却
提示された価格に納得した場合、商品を売却し、その場で代金を受け取ります。

先述の通り、質屋では買取も借入も可能ですが、古物商は買取専門で、融資は出来ません。比較すると、質屋の方がフレキシブルな対応が出来るように見受けられますが、どちらにもそれぞれ良い点と悪い点があります。質屋と買取専門店の違いに関しては「質屋と買取専門店の違い:お得にお金を手にするための唯一の方法?」で更に詳しく解説していますのであわせてご覧ください。次はそれぞれを利用するメリットとデメリットについてご説明したいと思います。

質屋のメリットとデメリット

質屋のメリットとデメリット

質屋のメリット

  • 即日融資:質屋では、査定後すぐに融資を受けることができます。
  • 信用情報に影響しない:質屋での融資は信用情報に影響しないため、他の金融機関の審査に影響を与えません。そのため、信用情報に傷をつけたくないという方で、急場の資金が必要という方にはぴったりのサービスです。また、信用情報に”既に傷がついてしまっている人”でも借入をすることが出来ることも魅力の一つです。
  • 返済期限の延長が可能:万が一期間内に全額支払いが出来ない場合、1ヶ月単位での利息を支払えば返済期限を延長することが出来ます。この返済期日のことを流質期限と言い、通常借入から3ヶ月後に設定されます。この流質期限に全額返済が出来ない場合は、1ヶ月分の金利を支払えばそこから1ヶ月、2ヶ月分の金利を支払えば2ヶ月後に再度流質期限の設定をすることが出来ます。

質屋のデメリット

  • 高い利息:質屋の利息は比較的高く設定されていることが多いですが、利息の上限は質屋営業法によって定められているため、法外な金利を取られることはありませんので基本的には安心して利用することが出来ます。
  • 品物が取り戻せない:返済日である流質期限を過ぎても元金、金利共に支払えない場合は預けた品物は質屋の所有物となり取り戻すことが出来なくなります。

なお、質屋に偽物や盗品などを持ち込むと高い確率でバレてしまいます。詳しくは「質屋にに質入れや買取を依頼するとバレる3つのこととは?質のメリットとデメリットを解説」にてご紹介していますので合わせてご覧ください。

古物商のメリットとデメリット

古物商のメリットとデメリット

古物商のメリット

  • 不要品の現金化:不要になった商品を簡単に現金化することができます。
  • 手軽な取引:古物商での売買も非常に手軽であり、特別な審査や手続きなどは一切必要ありません。

古物商のデメリット

  • 買い取り価格の低さ:ビジネスとして考えた時、買取金額と再販金額の差が大きければ大きいほど利益が出ます。そのため古物商の買い取り価格は市場価格よりも低く設定されることが多いです。
  • 商品による価値の差異:取り扱う商品の状態や市場価値によって、買い取り価格が大きく異なります。また、時期なども買取価格に影響します。

質屋と古物商の違いまとめ

質屋と古物商の違いまとめ

質屋と古物商は、それぞれ質屋営業法と古物営業法という異なる許可に基づいてサービスを提供しています。質屋は担保融資を通じてお金を借りることができ、品物を買い取ることも出来ます。古物商からお金を借りることは出来ませんが不要品を現金化することができます。どちらのサービスを利用するかは、個々の状況や目的に応じて選ぶことが重要です。

意外な物を例にとると、iPhoneなどは思った以上の査定額になることがあります。一般的には毎日使用するもののため、基本的には手放したくは無いでしょう。そのため、短期融資を受ける質物としては最適です。そのためiPhoneなど普段から使用するものは質入れを利用すると良いでしょう。

一方で型遅れのブランドアパレルや、損傷の激しいブランドバッグなどは購入時の価格が高かったこともあり、捨てられずにクローゼットの中にしまいっぱなしになっているケースなどがあるのではないでしょうか。しかし腐っても鯛という言葉があるように、ブランド物はファスナーが外れてしまったり、バッグの持ち手が摩耗して表面のコーティングが剥がれてしまったりという状態が悪いものでもある一定の値付けがされるケースが多いのです。そのため使用しないものやブランド物のジャンク品などがある場合は古物商に持ち込んでも良いでしょう。ただし、質屋では融資も買取も行っているため、迷った場合、まずは質屋の店舗を訪れて相談をしてみても良いと思います。

このように質屋と古物商の違いやそれぞれのメリットとデメリットを理解することで、目的や品物によって最適なサービスを選択することができるようになるのです。